疲労して、書斎のなかで精神を休める必要が起るのだそうであった。
 宗助はそういう方面にまるで経験のない男ではなかったので、強《し》いて興味を装《よそお》う必要もなく、ただ尋常な挨拶《あいさつ》をするところが、かえって主人の気に入るらしかった。彼は平凡な宗助の言葉のなかから、一種異彩のある過去を覗《のぞ》くような素振《そぶり》を見せた。しかしそちらへは宗助が進みたがらない痕迹《こんせき》が少しでも出ると、すぐ話を転じた。それは政略よりもむしろ礼譲からであった。したがって宗助には毫《ごう》も不愉快を与えなかった。
 そのうち小六の噂《うわさ》が出た。主人はこの青年について、肉身の兄が見逃すような新らしい観察を、二三|有《も》っていた。宗助は主人の評語を、当ると当らないとに論なく、面白く聞いた。そのなかに、彼は年に合わしては複雑な実用に適しない頭を有っていながら、年よりも若い単純な性情を平気で露《あら》わす子供じゃないかという質問があった。宗助はすぐそれを首肯《うけが》った。しかし学校教育だけで社会教育のないものは、いくら年を取ってもその傾《かたむき》があるだろうと答えた。
「さよう、それと
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