なりはしなかったろうかと考えた。
そこへ下女が三尺の狭い入口を開けて這入《はい》って来たが、改ためて宗助に鄭重《ていちょう》な御辞儀をした上、木皿のような菓子皿のようなものを、一つ前に置いた。それから同じ物をもう一つ主人の前に置いて、一口もものを云わずに退《さ》がった。木皿の上には護謨毬《ゴムまり》ほどな大きな田舎饅頭《いなかまんじゅう》が一つ載《の》せてあった。それに普通の倍以上もあろうと思われる楊枝《ようじ》が添えてあった。
「どうです暖《あった》かい内に」と主人が云ったので、宗助は始めてこの饅頭の蒸《む》して間もない新らしさに気がついた。珍らしそうに黄色い皮を眺《なが》めた。
「いやできたてじゃありません」と主人がまた云った。「実は昨夜《さくや》ある所へ行って、冗談《じょうだん》半分に賞《ほ》めたら、御土産《おみやげ》に持っていらっしゃいと云うから貰って来たんです。その時は全く暖《あっ》たかだったんですがね。これは今上げようと思って蒸《む》し返さしたのです」
主人は箸《はし》とも楊枝《ようじ》とも片のつかないもので、無雑作《むぞうさ》に饅頭を割って、むしゃむしゃ食い始めた。宗
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