らない本です。その解らない物を教えた時に丁度速水君が生徒だったから、偉くない偉くないという考えが何時《いつ》までも退《の》かないのかも知れません。それでその後英語も大分教えて年功《ねんこう》を積みましたが、速水君に断りますが、その後発達した今日の私の英語の力でも、あのバークの論文はやはり解らない。嘘だと思うなら速水君があれを教えて御覧になれば直《す》ぐ分る。――こんな下らない事を言って時間ばかり経って御迷惑でありましょうが、実は時間を潰すために、そういう事を言うのであります。大した問題もありませんから。
それで、先刻演題という話でしたが、演題というようなものはないから、何か好加減《いいかげん》に一つ題は貴方がたの方で後で拵《こしら》えて下さい。チョッと複雑過ぎて簡単な題にならんような高尚な事なんだろうと思う。何か御話しようと思いましたが、実は先刻申上げたような訳で、時間もなし、今日も人が来ますし、チッとも考えられない。それだからいう事は余り大した事ではありません。が、もう少しの間、極《ご》く雑《ざっ》としたところを御話して御免|蒙《こうむ》る事にしましょう。
私はこの間《あいだ》文
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