えるのであります。そういう風にそれを道徳上にも応用が出来ます。それから芸術上は無論の事ですね。そんな例は沢山挙げても宜《よ》いけれども、時間がないから略して置きます。とにかく大変人は模倣を喜ぶものだということ、それは自分の意志からです、圧迫ではないのです。好《この》んで遣る、好んで模倣をするのです。
同時に世の中には、法律とか、法則とかいうものがあって、これは外圧的に人間というものを一束《ひとたば》にしようとする。貴方がたも一束にされて教育を受けている。十把一《じっぱひと》からげにして教育されている。そうしないと始末に終《お》えないから、やむをえず外圧的に皆さんを圧迫しているのである。これも一種の約束で、そうしないと教育上に困難であるからである。その約束、法則というものは政治上にも教育上にもソシャル・マナーの上にもある。飯を食べるのにサラサラグチャグチャは不可《いけ》ないという。そういうのはこれは法則でしょう。それから道徳の法則、これは当り前の話で、金を借りればどうしても返さねばならぬようになっている。それから芸術上の法則というのがある。これがまた在来の日本画だとか、御能《おのう》だ
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