かといえば、そうではない。悪く言う意味で、御手際が大変好いのです。言葉を換えていえば、腕力はある、腕の力はある。それじゃ何処が悪いかと言えば、頭がない。頭がなくて手だけで描いている。職人見たようなものである。そうまでいうと御気の毒だから、それだけは公にしません。――これだけ公にしていれば沢山だが――私は別に画家や文展の非難を遣《や》っているのではありません、画家を個人的に悪口を言っている訳ではありません。ただ感じた事についてチョッと必要だから申すのでありますが、唯ノッペリとしている。例えばシミ[#「シミ」に傍点]がなく、マダラ[#「マダラ」に傍点]がなく、ムラ[#「ムラ」に傍点]がなく、仕上げが綺麗に出来ている。ああいう手際というものは、丁稚奉公《でっちぼうこう》をして五年十年|遣《や》らなければ出来ないでしょうけれども、それ以外に何かあるかと聞かれても、私には分らない。丁度人間でいいますと、やはり紳士というものに能《よ》く似ていると思う。紳士とはどんな者かというと、紳士というものは、唯ノッペリしている。顔ばかりじゃありません。マナーが――態度及び挙止動作《きょしどうさ》が――ノッペリ
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