しく見えた。
「由雄さん、お前さん自分で奥さんを貰う時、やっぱりそんな料簡《りょうけん》で貰ったの」
叔母の質問は突然であると共に、どういう意味でかけられたのかさえ津田には見当《けんとう》がつかなかった。
「そんな料簡《りょうけん》って、叔母さんだけ承知しているぎりで、当人の僕にゃ分らないんだから、ちょっと返事のしようがないがな」
「何も返事を聞かなくったって、叔母さんは困りゃしないけれどもね。――女一人を片づける方《ほう》の身になって御覧なさい。たいていの事じゃないから」
藤井は四年|前《ぜん》長女を片づける時、仕度《したく》をしてやる余裕がないのですでに相当の借金をした。その借金がようやく片づいたと思うと、今度はもう次女を嫁にやらなければならなくなった。だからここでもしお金さんの縁談が纏《まと》まるとすれば、それは正に三人目の出費《ものいり》に違なかった。娘とは格が違うからという意味で、できるだけ倹約したところで、現在の生計向《くらしむき》に多少苦しい負担の暗影を投げる事はたしかであった。
二十七
こういう時に、せめて費用の半分でも、津田が進んで受け持つ事
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