まれちまったんです」
「そうでしょう。そうでもなければ、どう考えたって変ですからね」
「いくら変だって偶然という事も世の中にはありますよ。そうあなたのように……」
「だからもう変じゃないのよ。訳さえ伺えば、何でも当り前になっちまうのね」
津田はつい「こっちでもその訳を訊《き》きに来たんだ」と云いたくなった。しかし何にもそこに頓着《とんじゃく》していないらしい清子の質問は正直であった。
「それであなたもどこかお悪いの」
津田は言葉少なに病気の顛末《てんまつ》を説明した。清子は云った。
「でも結構ね、あなたは。そういう時に会社の方の御都合《ごつごう》がつくんだから。そこへ行くと良人《うち》なんか気の毒なものよ、朝から晩まで忙がしそうにして」
「関君こそ酔興《すいきょう》なんだから仕方がない」
「可哀想《かわいそう》に、まさか」
「いや僕のいうのは善《い》い意味での酔興ですよ。つまり勉強家という事です」
「まあ、お上手だ事」
この時下から急ぎ足で階子段《はしごだん》を上《のぼ》って来る草履《ぞうり》の音が聴えたので、何か云おうとした津田は黙って様子を見た。すると先刻《さっき》とは違った
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