せているんじゃありませんか。それをあなたが隠そうとなさるから――」
「そんならそうと早くおっしゃればいいのに、私隠しも何にもしませんわ、そんな事。理由《わけ》は何でもないのよ。ただあなたはそういう事をなさる方なのよ」
「待伏せをですか」
「ええ」
「馬鹿にしちゃいけません」
「でも私の見たあなたはそういう方なんだから仕方がないわ。嘘《うそ》でも偽《いつわ》りでもないんですもの」
「なるほど」
津田は腕を拱《こまぬ》いて下を向いた。
百八十七
しばらくして津田はまた顔を上げた。
「何だか話が議論のようになってしまいましたね。僕はあなたと問答をするために来たんじゃなかったのに」
清子は答えた。
「私にもそんな気はちっともなかったの。つい自然そこへ持って行かれてしまったんだから故意《こい》じゃないのよ」
「故意でない事は僕も認めます。つまり僕があんまりあなたを問いつめたからなんでしょう」
「まあそうね」
清子はまた微笑した。津田はその微笑のうちに、例の通りの余裕を認めた時、我慢しきれなくなった。
「じゃ問答ついでに、もう一つ答えてくれませんか」
「ええ何なりと」
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