「ええ、よく知ってらっしゃいますね」
「うん、そりゃ知ってるさ」
「天眼通《てんがんつう》ですね」
「天眼通じゃない、天鼻通《てんびつう》と云って万事鼻で嗅《か》ぎ分《わ》けるんだ」
「まるで犬見たいですね」
階子段《はしごだん》の途中で始まったこの会話は、上《あが》り口《くち》の一番近くにある清子の部屋からもう聴き取れる距離にあった。津田は暗《あん》にそれを意識した。
「ついでに僕が関さんの室を嗅ぎ分けてやるから見ていろ」
彼は清子の室の前へ来て、ぱたりとスリッパーの音を止《と》めた。
「ここだ」
下女は横眼で津田の顔を睨《にら》めるように見ながら吹き出した。
「どうだ当ったろう」
「なるほどあなたの鼻はよく利《き》きますね。猟犬《りょうけん》よりたしかですよ」
下女はまた面白そうに笑ったが、室の中からはこの賑《にぎ》やかさに対する何の反応も出て来なかった。人がいるかいないかまるで分らない内側は、始めと同じように索寞《ひっそり》していた。
「お客さまがいらっしゃいました」
下女は外部《そと》から清子に話しかけながら、建てつけの好い障子《しょうじ》をすうと開けてくれた。
「
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