じきゃく》のする通り、寝しなに一風呂入って温《あたた》まるつもりと見えて、手に小型のタウエルを提《さ》げていた。それから津田と同じようにニッケル製の石鹸入《シャボンいれ》を裸《はだか》のまま持っていた。棒のように硬く立った彼女が、なぜそれを床の上へ落さなかったかは、後からその刹那《せつな》の光景を辿《たど》るたびに、いつでも彼の記憶中に顔を出したがる疑問であった。
彼女の姿は先刻《さっき》風呂場で会った婦人ほど縦《ほしい》ままではなかった。けれどもこういう場所で、客同志が互いに黙認しあうだけの自由はすでに利用されていた。彼女は正式に幅の広い帯を結んでいなかった。赤だの青だの黄だの、いろいろの縞《しま》が綺麗《きれい》に通っている派手《はで》な伊達巻《だてまき》を、むしろずるずるに巻きつけたままであった。寝巻《ねまき》の下に重ねた長襦袢《ながじゅばん》の色が、薄い羅紗製《らしゃせい》の上靴《スリッパー》を突《つっ》かけた素足《すあし》の甲を被《おお》っていた。
清子の身体《からだ》が硬くなると共に、顔の筋肉も硬くなった。そうして両方の頬と額の色が見る見るうちに蒼白《あおじろ》く変って
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