白い瀬戸張《せとばり》のなかで、大きくなったり小さくなったりする不定な渦《うず》が、妙に彼を刺戟《しげき》した。
 あたりは静かであった。膳《ぜん》に向った時下女の云った通りであった。というよりも事実は彼女の言葉を一々|首肯《うけが》って、おおかたこのくらいだろうと暗《あん》に想像したよりも遥《はる》かに静かであった。客がどこにいるのかと怪しむどころではなく、人がどこにいるのかと疑いたくなるくらいであった。その静かさのうちに電灯は隈《くま》なく照り渡った。けれどもこれはただ光るだけで、音もしなければ、動きもしなかった。ただ彼の眼の前にある水だけが動いた。渦《うず》らしい形を描いた。そうしてその渦は伸びたり縮んだりした。
 彼はすぐ水から視線を外《そら》した。すると同じ視線が突然人の姿に行き当ったので、彼ははっとして、眼を据《す》えた。しかしそれは洗面所の横に懸《か》けられた大きな鏡に映る自分の影像《イメジ》に過ぎなかった。鏡は等身と云えないまでも大きかった。少くとも普通床屋に具《そな》えつけてあるものぐらいの尺はあった。そうして位地《いち》の都合上《つごうじょう》、やはり床屋のそれのご
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