とも夜の色とも片づかないものの中にぼんやり描き出された町の様はまるで寂寞《せきばく》たる夢であった。自分の四辺《しへん》にちらちらする弱い電灯の光と、その光の届かない先に横《よこた》わる大きな闇《やみ》の姿を見較《みくら》べた時の津田にはたしかに夢という感じが起った。
「おれは今この夢見たようなものの続きを辿《たど》ろうとしている。東京を立つ前から、もっと几帳面《きちょうめん》に云えば、吉川夫人にこの温泉行を勧められない前から、いやもっと深く突き込んで云えば、お延と結婚する前から、――それでもまだ云い足りない、実は突然清子に背中を向けられたその刹那《せつな》から、自分はもうすでにこの夢のようなものに祟《たた》られているのだ。そうして今ちょうどその夢を追《おっ》かけようとしている途中なのだ。顧《かえり》みると過去から持ち越したこの一条《ひとすじ》の夢が、これから目的地へ着くと同時に、からりと覚めるのかしら。それは吉川夫人の意見であった。したがって夫人の意見に賛成し、またそれを実行する今の自分の意見でもあると云わなければなるまい。しかしそれははたして事実だろうか。自分の夢ははたして綺麗に拭
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