二人の影を見失った。彼は停留所の前にある茶店で、写真版だの石版だのと、思い思いに意匠を凝《こ》らした温泉場の広告絵を眺めながら、昼食《ちゅうじき》を認《した》ためた。時間から云って、平常より一時間以上も後《おく》れていたその昼食は、膳《ぜん》を貪《むさ》ぼる人としての彼を思う存分に発揮させた。けれども発車は目前に逼《せま》っていた。彼は箸《はし》を投げると共にすぐまた軽便に乗り移らなければならなかった。
基点に当る停車場《ステーション》は、彼の休んだ茶店のすぐ前にあった。彼は電車よりも狭いその車を眼の前に見つつ、下女から支度料の剰銭《つり》を受取ってすぐ表へ出た。切符に鋏《はさみ》を入れて貰う所と、プラットフォームとの間には距離というものがほとんどなかった。五六歩動くとすぐ足をかける階段へ届いてしまった。彼は車室のなかで、また先刻《さっき》の二人連れと顔を合せた。
「やあお早うがす。こっちへおかけなさい」
爺《じい》さんは腰をずらして津田のために、彼の腕に抱えて来た膝《ひざ》かけを敷く余地を拵《こしら》えてくれた。
「今日は空《す》いてて結構です」
爺さんは避寒避暑二様の意味で、
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