に一種の暗示であった。彼は午後の何時間かをその軽便に揺られる転地者であった。ことによると同じ方角へ遊びに行く連中かも知れないと思った津田の耳は、彼らの談話に対して急に鋭敏になった。転席の余地がないので、不便な姿勢と図抜《ずぬ》けた大声を忍ばなければならなかった二人の云う事は一々津田に聴こえた。
「こんな天気になろうとは思わなかったね。これならもう一日延ばした方が楽だった」
中折《なかおれ》に駱駝《らくだ》の外套《がいとう》を着た落ちつきのある男の方がこういうと、爺さんはすぐ答えた。
「何たかが雨だあね。濡《ぬ》れると思やあ、何でもねえ」
「だが荷物が厄介《やっかい》だよ。あの軽便へ雨曝《あまざら》しのまま載せられる事を考えると、少し心細くなるから」
「じゃおいらの方が雨曝しになって、荷物だけを室《へや》の中へ入れて貰う事にしよう」
二人は大きな声を出して笑った。その後で爺さんがまた云った。
「もっともこの前のあの騒ぎがあるからね。途中で汽缶《かま》へ穴が開《あ》いて動《いご》けなくなる汽車なんだから、全くのところ心細いにゃ違ない」
「あの時ゃどうして向うへ着いたっけ」
「なにあっち
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