んだ。ねえ津田君そうだろう」
 忌々《いまいま》しい関所をもう通り越していた津田は、かえって好いところで相談をかけられたと同じ事であった。鷹揚《おうよう》な彼の一諾は、今夜ここに落ち合った不調和な三人の会合に、少くとも形式上|体裁《ていさい》の好い結末をつけるのに充分であった。彼は醜陋《しゅうろう》に見える自分の退却を避けるために眼前の機会を捕えた。
「そうだね。それが一番いいだろう」
 小林は押問答の末、とうとう三枚のうち一枚を原の手に渡した。残る二枚を再びもとの隠袋《ポケット》へ収める時、彼は津田に云った。
「珍らしく余裕が下から上へ流れた。けれどもここから上へはもう逆戻りをしないそうだ。だからやっぱり君に対してサンクスだ」
 表へ出た三人は濠端《ほりばた》へ来て、電車を待ち合せる間大きな星月夜《ほしづきよ》を仰いだ。

        百六十七

 間《ま》もなく三人は離れ離れになった。
「じゃ失敬、僕は停車場《ステーション》へ送って行かないよ」
「そうか、来たってよさそうなものだがね。君の旧友が朝鮮へ行くんだぜ」
「朝鮮でも台湾でも御免だ」
「情合《じょうあい》のない事|夥《お
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