てんぷ》の能力に原因しているとは限らない。僕に時を与えよだ、僕に金を与えよだ。しかる後、僕がどんな人間になって君らの前に出現するかを見よだ」
この時小林の頭には酒がもう少し廻っていた。笑談とも真面目とも片のつかない彼の気※[#「(諂−言)+炎」、第3水準1−87−64]《きえん》には、わざと酔の力を藉《か》ろうとする欝散《うっさん》の傾《かたむ》きが見えて来た。津田は相手の口にする言葉の価値を正面から首肯《うけが》うべく余儀なくされた上に、多少彼の歩き方につき合う必要を見出《みいだ》した。
「そりゃ君のいう通りだ。だから僕は君に同情しているんだ。君だってそのくらいの事は心得ていてくれるだろう。でなければ、こうやって、わざわざ会食までして君の朝鮮行《ちょうせんいき》を送る訳がないからね」
「ありがとう」
「いや嘘《うそ》じゃないよ。現にこの間もお延にその訳をよく云って聴《き》かせたくらいだもの」
胡散臭《うさんくさ》いなという眼が小林の眉《まゆ》の下で輝やいた。
「へええ。本当《ほんと》かい。あの細君の前で僕を弁護してくれるなんて、君にもまだ昔の親切が少しは残ってると見えるね。しかし
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