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百五十五
小林と会見の場所は、東京で一番|賑《にぎ》やかな大通りの中ほどを、ちょっと横へ切れた所にあった。向うから宅《うち》へ誘いに寄って貰《もら》う不快を避けるため、またこっちで彼の下宿を訪《たず》ねてやる面倒を省《はぶ》くため、津田は時間をきめてそこで彼に落ち合う手順にしたのである。
その時間は彼が電車に乗っているうちに過ぎてしまった。しかし着物を着換えて、お延から金を受け取って、少しの間|坐談《ざだん》をしていたために起ったこの遅刻は、何らの痛痒《つうよう》を彼に与えるに足りなかった。有体《ありてい》に云えば、彼は小林に対して克明に律義《りちぎ》を守る細心の程度を示したくなかった。それとは反対に、少し時間を後《おく》らせても、放縦《ほうしょう》な彼の鼻柱を挫《くじ》いてやりたかった。名前は送別会だろうが何だろうが、その実金をやるものと貰うものとが顔を合せる席にきまっている以上、津田はたしかに優者であった。だからその優者の特権をできるだけ緊張させて、主客《しゅかく》の位地《いち》をあらかじめ作っておく方が、相手の驕慢《きょうまん》を未前に防ぐ手段として、
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