ているので、何だか不安であった。彼は訊《き》かないでもいい質問を医者にかけてみたりした。
「括約筋《かつやくきん》を切り残したとおっしゃるけれども、それでどうして下からガーゼが詰《つ》められるんですか」
「括約筋はとば口にゃありません。五分ほど引っ込んでます。それを下から斜《はす》に三分ほど削《けず》り上げた所があるのです」
津田はその晩から粥《かゆ》を食い出した。久しく麺麭《パン》だけで我慢していた彼の口には水ッぽい米の味も一種の新らしみであった。趣味として夜寒《よさむ》の粥を感ずる能力を持たない彼は、秋の宵《よい》の冷たさを対照に置く薄粥《うすがゆ》の暖かさを普通の俳人以上に珍重して啜《すす》る事ができた。
療治の必要上、長い事|止《と》められていた便の疎通を計るために、彼はまた軽い下剤を飲まなければならなかった。さほど苦《く》にもならなかった腹の中が軽くなるに従って、彼の気分もいつか軽くなった。身体《からだ》の楽になった彼は、寝転《ねこ》ろんでただ退院の日を待つだけであった。
その日も一晩明けるとすぐに来た。彼は車を持って迎いに来たお延の顔を見るや否や云った。
「やっと帰れ
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