蘇《よみが》えった。
「夫は変ってるんじゃなかった。やっぱり昔の人だったんだ」
 こう思ったお延の満足は、津田を窮地から救うに充分であった。暴風雨になろうとして、なり損《そく》ねた波瀾《はらん》はようやく収まった。けれども事前《じぜん》の夫婦は、もう事後《じご》の夫婦ではなかった。彼らはいつの間にか吾《われ》知らず相互の関係を変えていた。
 波瀾の収まると共に、津田は悟った。
「畢竟《ひっきょう》女は慰撫《いぶ》しやすいものである」
 彼は一場《いちじょう》の風波《ふうは》が彼に齎《もたら》したこの自信を抱いてひそかに喜こんだ。今までの彼は、お延に対するごとに、苦手《にがて》の感をどこかに起さずにいられた事がなかった。女だと見下ろしながら、底気味の悪い思いをしなければならない場合が、日ごとに現前《げんぜん》した。それは彼女の直覚であるか、または直覚の活作用とも見傚《みな》される彼女の機略《きりゃく》であるか、あるいはそれ以外の或物であるか、たしかな解剖《かいぼう》は彼にもまだできていなかったが、何しろ事実は事実に違いなかった。しかも彼自身自分の胸に畳み込んでおくぎりで、いまだかつて他《
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