容《い》れずという際《きわ》どい間際《まぎわ》に、旨《うま》い口実が天から降って来た。
「車夫《くるまや》が帰って来てそう云ったもの。おおかたお時が車夫に話したんだろう」
幸いお延がお秀の後を追《おっ》かけて出た事は、下女にも解っていた。偶発の言訳が偶中《ぐうちゅう》の功《こう》を奏した時、津田は再度の胸を撫《な》で下《おろ》した。
百四十九
遮二無二《しゃにむに》津田を突き破ろうとしたお延は立ちどまった。夫がそれほど自分をごまかしていたのでないと考える拍子《ひょうし》に気が抜けたので、一息《ひといき》に進むつもりの彼女は進めなくなった。津田はそこを覘《ねら》った。
「お秀なんぞが何を云ったって構わないじゃないか。お秀はお秀、お前はお前なんだから」
お延は答えた。
「そんなら小林なんぞがあたしに何を云ったって構わないじゃありませんか。あなたはあなた、小林は小林なんだから」
「そりゃ構わないよ。お前さえしっかりしていてくれれば。ただ疑ぐりだの誤解だのを起して、それをむやみに振り廻されると迷惑するから、こっちだって黙っていられなくなるだけさ」
「あたしだって同じ事
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