津田を自分の思うところへ押し込めた。

        百四十

 準備はほぼ出来上った。要点はそろそろ津田の前に展開されなければならなかった。夫人は機を見てしだいにそこへ入って行った。
「そんならもっと男らしくしちゃどうです」という漠然《ばくぜん》たる言葉が、最初に夫人の口を出た。その時津田はまたかと思った。先刻《さっき》から「男らしくしろ」とか「男らしくない」とかいう文句を聴《き》かされるたびに、彼は心の中で暗《あん》に夫人を冷笑した。夫人の男らしいという意味ははたしてどこにあるのだろうと疑ぐった。批判的な眼を拭《ぬぐ》って見るまでもなく、彼女は自分の都合ばかりを考えて、津田をやり込めるために、勝手なところへやたらにこの言葉を使うとしか解釈できなかった。彼は苦笑しながら訊《き》いた。
「男らしくするとは?――どうすれば男らしくなれるんですか」
「あなたの未練を晴らすだけでさあね。分り切ってるじゃありませんか」
「どうして」
「全体どうしたら晴らされると思ってるんです、あなたは」
「そりゃ私には解りません」
 夫人は急に勢《きお》い込んだ。
「あなたは馬鹿ね。そのくらいの事が解らない
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