」
はたして夫人の云う通りなら馬鹿気ているに違なかった。津田は首を傾けた。
「しかし解りませんよ」
「いいえ解ってるのよ」
「じゃ気がつかないんでしょう」
「いいえ気もついているのよ」
「じゃどうしたんでしょう。――つまり私が隠している事にでも帰着するんですか」
「まあそうよ」
津田は投げ出した。ここまで追いつめられながら、まだ隠し立《だて》をしようとはさすがの自分にも道理と思えなかった。
「馬鹿でも仕方がありません。馬鹿の非難は甘んじて受けますから、どうぞ説明して下さい」
夫人は微《かす》かに溜息《ためいき》を吐《つ》いた。
「ああああ張合《はりあい》がないのね、それじゃ。せっかく私が丹精《たんせい》して拵《こしら》えて来て上げたのに、肝心《かんじん》のあなたがそれじゃ、まるで無駄骨《むだぼね》を折ったと同然ね。いっそ何にも話さずに帰ろうか知ら」
津田は迷宮《メーズ》に引き込まれるだけであった。引き込まれると知りながら、彼は夫人の後を追《おっ》かけなければならなかった。そこには自分の好奇心が強く働いた。夫人に対する義理と気兼《きがね》も、けっして軽い因子ではなかった。彼は何度
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