に突きつけて津田を抑《おさ》えたと同じ事であった。自白後に等しい彼の態度は二人の仕合《しあい》に一段落をつけたように夫人を強くした。けれども彼女は津田が最初に考えたほどこの点において独断的な暴君ではなかった。彼女は思ったより細緻《さいち》な注意を払って、津田の心理状態を観察しているらしかった。彼女はその実券《じっけん》を、いったん勝った後《あと》で彼に示した。
「ただ未練未練って、雲を掴《つか》むような騒ぎをやるんじゃありませんよ。私《わたし》には私でまたちゃんと握ってるところがあるんですからね。これでもあなたの未練をこんなものだといって他《ひと》に説明する事ができるつもりでいるんですよ」
 津田には何が何だかさっぱり訳が解らなかった。
「ちょっと説明して見て下さいませんか」
「お望みなら説明してもよござんす。けれどもそうするとつまりあなたを説明する事になるんですよ」
「ええ構いません」
 夫人は笑い出した。
「そう他の云う事が通じなくっちゃ困るのね。現在自分がちゃんとそこに控えていながら、その自分が解らないで、他に説明して貰《もら》うなんてえのは馬鹿気《ばかげ》ているじゃありませんか
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