夫人はこれだけ云って、言葉に区切《くぎり》を付けた後で、新たに出直した。
「私《わたし》の判断を云いましょうか。延子さんはああいう怜俐《りこう》な方《かた》だから、もうきっと感づいているに違《ちがい》ないと思うのよ。何、みんな判るはずもないし、またみんな判っちゃこっちが困るんです。判ったようでまた判らないようなのが、ちょうど持って来いという一番結構な頃合《ころあい》なんですからね。そこで私の鑑定から云うと、今の延子さんは、都合《つごう》よく私のお誂《あつら》え通《どお》りのところにいらっしゃるに違ないのよ」
 津田は「そうですか」というよりほかに仕方がなかった。しかしそういう結論を夫人に与える材料はほとんどなかろうにと、腹の中では思った。しかるに夫人はあると云い出した。
「でなければ、ああ虚勢を張る訳がありませんもの」
 お延の態度を虚勢と評したのは、夫人が始めてであった。この二字の前に怪訝《けげん》な思いをしなければならなかった津田は、一方から見て、またその皮肉を第一に首肯《うけが》わなければならない人であった。それにもかかわらず彼は躊躇《ちゅうちょ》なしに応諾を与える事ができなかっ
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