い事を誰も訊《き》いていやしないんだから」
津田はとうとう口を開くべく余儀なくされた。
「お返事ができない訳でもありませんけれども、あんまり問題が漠然《ばくぜん》としているものですから……」
「じゃ仕方がないから私の方で云いましょうか。よござんすか」
「どうぞそう願います」
「あなたは」と云いかけた夫人はこの時ちょっと言葉を切ってまた継《つ》いだ。
「本当によござんすか。――あたしはこういう無遠慮な性分《しょうぶん》だから、よく自分の思ったままをずばずば云っちまった後《あと》で、取り返しのつかない事をしたと後悔する場合がよくあるんですが」
「なに構いません」
「でももしか、あなたに怒られるとそれっきりですからね。後でいくら詫《あや》まっても追《おっ》つかないなんて馬鹿はしたくありませんもの」
「しかし私の方で何とも思わなければそれでいいでしょう」
「そこさえ確かなら無論いいのよ」
「大丈夫です。偽《うそ》だろうが本当だろうが、奥さんのおっしゃる事ならけっして腹は立てませんから、遠慮なさらずに云って下さい」
すべての責任を向うに背負《しょ》わせてしまう方が遥《はる》かに楽だと考えた津
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