に、彼の予期した通りの言葉がすぐ彼女の口から洩《も》れた。
「実を云うと、私も皆さんと同なじ意見ですよ」
 権威ででもあるような調子で、最後にこう云った夫人の前に、彼はもちろん反抗の声を揚げる勇気を出す必要を認めなかった。しかし腹の中では同時に妙な思《おも》わく違《ちがい》に想《おも》いいたった。彼は疑った。
「何でこの人が急にこんな態度になったのだろう。自分のお延を鄭重《ていちょう》に取扱い過ぎるのが悪いといって非難する上に、お延自身をもその非難のうちに含めているのではなかろうか」
 この疑いは津田にとって全く新らしいものであった。夫人の本意に到着する想像上の過程を描き出す事さえ彼には困難なくらい新らしいものであった。彼はこの疑問に立ち向う前に、まだ自分の頭の中に残っている一つの質問を掛けた。
「岡本さんでも、そんな評判があるんでしょうか」
「岡本は別よ。岡本の事なんか私の関係するところじゃありません」
 夫人がすましてこう云い切った時、津田は思わずおやと思った。「じゃ岡本とあなたの方は別っこだったんですか」という次の問が、自然の順序として、彼の咽喉《のど》まで出かかった。
 実を云
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