れども彼女にはまた彼女に特有な趣《おもむき》があった。時間に制限のない彼女は、頼まれるまでもなく、機会さえあれば、他《ひと》の内輪に首を突ッ込んで、なにかと眼下《めした》、ことに自分の気に入った眼下の世話を焼きたがる代りに、到《いた》るところでまた道楽本位の本性を露《あら》わして平気であった。或時の彼女はむやみに急《せ》いて事を纏《まと》めようとあせった。そうかと思うと、ある時の彼女は、また正反対であった。わざわざべんべんと引ッ張るところに、さも興味でもあるらしい様子を見せてすましていた。鼠《ねずみ》を弄《もてあ》そぶ猫のようなこの時の彼女の態度が、たとい傍《はた》から見てどうあろうとも、自分では、閑散な時間に曲折した波瀾《はらん》を与えるために必要な優者の特権だと解釈しているらしかった。この手にかかった時の相手には、何よりも辛防《しんぼう》が大切であった。その代り辛防をし抜いた御礼はきっと来た。また来る事をもって彼女は相手を奨励した。のみならずそれを自分の倫理上の誇りとした。彼女と津田の間に取り換わされたこの黙契《もっけい》のために、津田の蒙《こうむ》った重大な損失が、今までにたった
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