、それでいいんです」
「あなただけを女と思えとおっしゃるのね。そりゃ解《わか》るわ。けれどもほかの女を女と思っちゃいけないとなるとまるで自殺と同じ事よ。もしほかの女を女と思わずにいられるくらいな夫なら、肝心《かんじん》のあなただって、やッぱり女とは思わないでしょう。自分の宅《うち》の庭に咲いた花だけが本当の花で、世間にあるのは花じゃない枯草だというのと同じ事ですもの」
「枯草でいいと思いますわ」
「あなたにはいいでしょう。けれども男には枯草でないんだから仕方がありませんわ。それよりか好きな女が世の中にいくらでもあるうちで、あなたが一番好かれている方が、嫂《ねえ》さんにとってもかえって満足じゃありませんか。それが本当に愛されているという意味なんですもの」
「あたしはどうしても絶対に愛されてみたいの。比較なんか始めから嫌《きら》いなんだから」
 お秀の顔に軽蔑《けいべつ》の色が現われた。その奥には何という理解力に乏しい女だろうという意味がありありと見透《みす》かされた。お延はむらむらとした。
「あたしはどうせ馬鹿だから理窟《りくつ》なんか解らないのよ」
「ただ実例をお見せになるだけなの。そ
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