んどうぞ話してちょうだいよ」
 その時お秀の涼しい眼のうちに残酷《ざんこく》な光が射した。
「延子さんはずいぶん勝手な方ね。御自分|独《ひと》り精一杯《せいいっぱい》愛されなくっちゃ気がすまないと見えるのね」
「無論よ。秀子さんはそうでなくっても構わないの」
「良人《うち》を御覧なさい」
 お秀はすぐこう云って退《の》けた。お延は話頭《わとう》からわざと堀を追《お》い除《の》けた。
「堀さんは問題外よ。堀さんはどうでもいいとして、正直の云《い》いっ競《くら》よ。なんぼ秀子さんだって、気の多い人が好きな訳はないでしょう」
「だって自分よりほかの女は、有れども無きがごとしってような素直《すなお》な夫が世の中にいるはずがないじゃありませんか」
 雑誌や書物からばかり知識の供給を仰いでいたお秀は、この時突然卑近な実際家となってお延の前に現われた。お延はその矛盾を注意する暇さえなかった。
「あるわよ、あなた。なけりゃならないはずじゃありませんか、いやしくも夫と名がつく以上」
「そう、どこにそんな好い人がいるの」
 お秀はまた冷笑の眼をお延に向けた。お延はどうしても津田という名前を大きな声で叫ぶ勇
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