うそ》ではないかと思われるような報告を聴《き》いた。
「堀の奥さんがいらっしゃいました」
 お延は下女の言葉を信ずる事ができないくらいに驚ろいた。昨日《きのう》の今日《きょう》、お秀の方からわざわざ自分を尋ねて来る。そんな意外な訪問があり得べきはずはなかった。彼女は二遍も三遍も下女の口を確かめた。何で来たかをさえ訊《き》かなければ気がすまなかった。なぜ待たせておかなかったかも問題になった。しかし下女は何にも知らなかった。ただ藤井の帰りに通《とお》り路《みち》だからちょっと寄ったまでだという事だけが、お秀の下女に残して行った言葉で解った。
 お延は既定のプログラムをとっさの間に変更した。病院は抜いて、お秀の方へ行先を転換しなければならないという覚悟をきめた。それは津田と自分との間に取り換わされた約束に過ぎなかった。何らの不自然に陥《おち》いる痕迹《こんせき》なしにその約束を履行するのは今であった。彼女はお秀の後《あと》を追《おっ》かけるようにして宅を出た。

        百二十三

 堀の家《うち》は大略《おおよそ》の見当から云って、病院と同じ方角にあるので、電車を二つばかり手前の停
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