外套《がいとう》のように留守《るす》へ取りに行かれちゃ困る」
 小林はにやにや笑いながら、じゃどうすればいいんだという問を顔色でかけた。まだ小林に聴《き》く事の残っている津田は、出立前《しゅったつぜん》もう一遍彼に会っておく方が便宜《べんぎ》であった。けれども彼とお延と落ち合う掛念《けねん》のある病院では都合《つごう》が悪かった。津田は送別会という名の下《もと》に、彼らの出会うべき日と時と場所とを指定した後で、ようやくこの厄介者《やっかいもの》を退去させた。

        百二十二

 津田はすぐ第二の予防策に取りかかった。彼は床の上に置かれた小型の化粧箱を取《と》り除《の》けて、その下から例のレターペーパーを同じラヴェンダー色の封筒を引き抜くや否や、すぐ万年筆を走らせた。今日は少し都合があるから、見舞に来るのを見合せてくれという意味を、簡単に書き下《くだ》した手紙は一分かかるかかからないうちに出来上った。気の急《せ》いた彼には、それを読み直す暇さえ惜かった。彼はすぐ封をしてしまった。そうして中味の不完全なために、お延がどんな疑いを起すかも知れないという事には、少しの顧慮も払わなか
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