し嘘《うそ》を吐《つ》く性分《しょうぶん》だが、私の家《うち》のような少人数《こにんず》な家族に、嘘付《うそつき》が二人できるのは、少し考えものですからね。と答えた」
 嘘吐《うそつき》という言葉がいつもより皮肉に津田を苦笑させた。彼は腹の中で、嘘吐な自分を肯《うけ》がう男であった。同時に他人の嘘をも根本的に認定する男であった。それでいて少しも厭世的《えんせいてき》にならない男であった。むしろその反対に生活する事のできるために、嘘が必要になるのだぐらいに考える男であった。彼は、今までこういう漠然《ばくぜん》とした人世観の下《もと》に生きて来ながら、自分ではそれを知らなかった。彼はただ行《おこな》ったのである。だから少し深く入り込むと、自分で自分の立場が分らなくなるだけであった。
「愛と虚偽」
 自分の読んだ一口噺《ひとくちばなし》からこの二字を暗示された彼は、二つのものの関係をどう説明していいかに迷った。彼は自分に大事なある問題の所有者であった。内心の要求上是非共それを解決しなければならない彼は、実験の機会が彼に与えられない限り、頭の中でいたずらに考えなければならなかった。哲学者でない
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