り易《か》えられたガーゼは一部分に過ぎなかった。要所を剥《は》がすと、血が迸《ほとば》しるかも知れないという身体《からだ》では、津田も無理をして宅《うち》へ帰る訳に行かなかった。
「やッぱり予定通りの日数《にっすう》は動かずにいるよりほかに仕方がないでしょうね」
 医者は気の毒そうな顔をした。
「なに経過次第じゃ、それほど大事を取るにも及ばないんですがね」
 それでも医者は、時間と経済に不足のない、どこから見ても余裕のある患者として、津田を取扱かっているらしかった。
「別に大した用事がお有《あり》になる訳でもないんでしょう」
「ええ一週間ぐらいはここで暮らしてもいいんです。しかし臨時にちょっと事件が起ったので……」
「はあ。――しかしもう直《じき》です。もう少しの辛防《しんぼう》です」
 これよりほかに云いようのなかった医者は、外来患者の方がまだ込《こ》み合《あ》わないためか、そこへ坐《すわ》って二三の雑談をした。中で、彼がまだ助手としてある大きな病院に勤めている頃に起ったという一口話《ひとくちばなし》が、思わず津田を笑わせた。看護婦が薬を間違えたために患者が死んだのだという嫌疑《けん
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