もお秀の味方である事をよく承知していた。次に津田の方から岡本はどうだろうと云い出した。けれども岡本は津田の父とそれほど深い交際がないと云う理由で、今度はお延が反対した。彼女はいっそ簡単に自分が和解の目的で、お秀の所へ行って見ようかという案を立てた。これには津田も大した違存《いぞん》はなかった。たとい今度の事件のためでなくとも、絶交を希望しない以上、何らかの形式のもとに、両家の交際は復活されべき運命をもっていたからである。しかしそれはそれとして、彼らはもう少し有効な方法を同時に講じて見たかった。彼らは考えた。
 しまいに吉川の名が二人の口から同じように出た。彼の地位、父との関係、父から特別の依頼を受けて津田の面倒を見てくれている目下の事情、――数えれば数えるほど、彼には有利な条件が具《そなわ》っていた。けれどもそこにはまた一種の困難があった。それほど親しく近づき悪《にく》い吉川に口を利《き》いて貰《もら》おうとすれば、是非共その前に彼の細君を口説《くど》き落さなければならなかった。ところがその細君はお延にとって大の苦手《にがて》であった。お延は津田の提議に同意する前に、少し首を傾けた。細
前へ 次へ
全746ページ中422ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング