慎《つつ》しんでいた。ところがお秀との悶着《もんちゃく》が、偶然にもお延の胸にあるこの扉を一度にがらりと敲《たた》き破った。しかもお延自身|毫《ごう》もそこに気がつかなかった。彼女は自分を夫の前に開放しようという努力も決心もなしに、天然自然自分を開放してしまった。だから津田にもまるで別人《べつにん》のように快よく見えた。
二人はこういう風で、いつになく融《と》け合った。すると二人が融け合ったところに妙な現象がすぐ起った。二人は今まで回避していた問題を平気で取り上げた。二人はいっしょになって、京都に対する善後策を講じ出した。
二人には同じ予感が働いた。この事件はこれだけで片づくまいという不安が双方の心を引き締めた。きっとお秀が何かするだろう。すれば直接京都へ向ってやるに違いない。そうしてその結果は自然二人の不利益となるにきまっている。――ここまでは二人の一致する点であった。それから先が肝心《かんじん》の善後策になった。しかしそこへ来ると意見が区々《まちまち》で、容易に纏《まと》まらなかった。
お延は仲裁者として第一に藤井の叔父を指名した。しかし津田は首を掉《ふ》った。彼は叔父も叔母
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