がらまた津田の枕元へ来て坐った。津田はむしろ落ちついて答えた。
「だから彼奴《あいつ》に電話なんかかけるなって云うんだ」
 二人は自然お秀を問題にしなければならなかった。
「秀子さんは、まさか基督教《キリストきょう》じゃないでしょうね」
「なぜ」
「なぜでも――」
「金を置いて行ったからかい」
「そればかりじゃないのよ」
「真面目《まじめ》くさった説法をするからかい」
「ええまあそうよ。あたし始めてだわ。秀子さんのあんなむずかしい事をおっしゃるところを拝見したのは」
「彼奴は理窟屋《りくつや》だよ。つまりああ捏《こ》ね返《かえ》さなければ気がすまない女なんだ」
「だってあたし始めてよ」
「お前は始めてさ。おれは何度だか分りゃしない。いったい何でもないのに高尚がるのが彼奴の癖なんだ。そうして生《なま》じい藤井の叔父の感化を受けてるのが毒になるんだ」
「どうして」
「どうしてって、藤井の叔父の傍《そば》にいて、あの叔父の議論好きなところを、始終《しじゅう》見ていたもんだから、とうとうあんなに口が達者になっちまったのさ」
 津田は馬鹿らしいという風をした。お延も苦笑した。

        
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