の愛を買うために、もしくはそれを買い戻すために、できるだけの実《じつ》を津田に見せたという意味で、幾分かの自信をその方面に得たつもりなのである。
 これはお延自身に解っている側《がわ》の消息中《しょうそくちゅう》で、最も必要と認めなければならない一端であるが、そのほかにまだ彼女のいっこう知らない間《ま》に、自然自分の手に入るように仕組まれた収獲ができた。無論それは一時的のものに過ぎなかった。けれども当然自分の上に向けられるべき夫の猜疑《さいぎ》の眼《め》から、彼女は運よく免《まぬ》かれたのである。というのは、お秀という相手を引き受ける前の津田と、それに悩まされ出した後の彼とは、心持から云っても、意識の焦点になるべき対象から見ても、まるで違っていた。だからこの変化の強く起った際《きわ》どい瞬間に姿を現わして、その変化の波を自然のままに拡《ひろ》げる役を勤めたお延は、吾知《われし》らず儲《もう》けものをしたのと同じ事になったのである。
 彼女はなぜ岡本が強《し》いて自分を芝居へ誘ったか、またなぜその岡本の宅《うち》へ昨日《きのう》行かなければならなくなったか、そんな内情に関するすべての自分
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