がけに郵便函《ゆうびんばこ》の中を見たら入っておりましたから、持って参りました」
お延の言葉は几帳面《きちょうめん》に改たまっていた。津田と差向いの時に比べると、まるで別人《べつにん》のように礼儀正しかった。彼女はその形式的なよそよそしいところを暗《あん》に嫌《きら》っていた。けれども他人の前、ことにお秀の前では、そうした不自然な言葉|遣《づか》いを、一種の意味から余儀なくされるようにも思った。
手紙は夫婦の間に待ち受けられた京都の父からのものであった。これも前便と同じように書留になっていないので、眼前の用を弁ずる中味に乏しいのは、お秀からまだ何にも聞かせられないお延にもほぼ見当だけはついていた。
津田は封筒を切る前に彼女に云った。
「お延|駄目《だめ》だとさ」
「そう、何が」
「お父さんはいくら頼んでももうお金をくれないんだそうだ」
津田の云《い》い方《かた》は珍らしく真摯《しんし》の気に充《み》ちていた。お秀に対する反抗心から、彼はいつの間にかお延に対して平《ひら》たい旦那様《だんなさま》になっていた。しかもそこに自分はまるで気がつかずにいた。衒《てら》い気《け》のないその
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