。そうしてあなたに詫《あや》まりましょう。そうしたらいいでしょう」
 お延は黙然として答えなかった。小林は彼女の前に姿勢を正しくした。
「ここに改めて言明します。津田君は立派な人格を具えた人です。紳士です。(もし社会にそういう特別な階級が存在するならば)」
 お延は依然として下を向いたまま口を利《き》かなかった。小林は語を続けた。
「僕は先刻奥さんに、人から笑われないようによく気をおつけになったらよかろうという注意を与えました。奥さんは僕の注意などを受ける必要がないと云われました。それで僕もその後《あと》を話す事を遠慮しなければならなくなりました。考えるとこれも僕の失言でした。併《あわ》せて取消します。その他もし奥さんの気に障《さわ》った事があったら、総《すべ》て取消します。みんな僕の失言です」
 小林はこう云った後で、沓脱《くつぬぎ》に揃《そろ》えてある自分の靴を穿《は》いた。そうして格子《こうし》を開けて外へ出る最後に、またふり向いて「奥さんさよなら」と云った。
 微《かす》かに黙礼を返したぎり、お延はいつまでもぼんやりそこに立っていた。それから急に二階の梯子段《はしごだん》を駈《
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