人間ですよ」
「それが私や津田に何の関係があるんです」
小林は待ってたと云わぬばかりに笑い出した。
「あなた方から見たらおおかたないでしょう。しかし僕から見れば、あり過ぎるくらいあるんです」
「どうして」
小林は急に答えなくなった。その意味は宿題にして自分でよく考えて見たらよかろうと云う顔つきをした彼は、黙って煙草《たばこ》を吹かし始めた。お延は一層の不快を感じた。もう好い加減に帰ってくれと云いたくなった。同時に小林の意味もよく突きとめておきたかった。それを見抜いて、わざと高を括《くく》ったように落ちついている小林の態度がまた癪《しゃく》に障《さわ》った。そこへ先刻《さっき》から心持ちに待ち受けていたお時がようやく帰って来たので、お延の蟠《わだか》まりは、一定した様式の下《もと》に表現される機会の来ない先にまた崩《くず》されてしまわなければならなかった。
八十七
お時は縁側《えんがわ》へ坐って外部《そと》から障子《しょうじ》を開けた。
「ただいま。大変遅くなりました。電車で病院まで行って参りましたものですから」
お延は少し腹立たしい顔をしてお時を見た。
「じ
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