いる前で、断りも何にもせずに、開封した。この平気な挙動がまたお延の注意を惹《ひ》いた。彼の遣口《やりくち》は不作法《ぶさほう》であった。けれども果断に違なかった。彼女はどうしても彼を粗野《がさつ》とか乱暴とかいう言葉で評する気にならなかった。
 手紙を一目見た由雄は、お延を玄関先に待たせたまま、入用《いりよう》の書物を探しに奥へ這入《はい》った。しかし不幸にして父の借ろうとする漢籍は彼の眼のつく所になかった。十分ばかりしてまた出て来た彼は、お延を空《むな》しく引きとめておいた詫《わび》を述べた。指定《してい》の本はちょっと見つからないから、彼の父の帰り次第、こっちから届けるようにすると云った。お延は失礼だというので、それを断った。自分がまた明日《あした》にでも取りに来るからと約束して宅《うち》へ帰った。
 するとその日の午後由雄が向うから望みの本をわざわざ持って来てくれた。偶然にもお延がその取次に出た。二人はまた顔を見合せた。そうして今度はすぐ両方で両方を認め合った。由雄の手に提《さ》げた書物は、今朝お延の返しに行ったものに比べると、約三倍の量があった。彼はそれを更紗《さらさ》の風呂敷
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