を擱《お》いた彼女は、もう一遍自分の書いたものを最初から読み直して見た。彼女の手を支配したと同じ気分が、彼女の眼を支配しているので、彼女は訂正や添削《てんさく》の必要をどこにも認めなかった。日頃苦にして、使う時にはきっと言海《げんかい》を引いて見る、うろ覚えの字さえそのままで少しも気にかからなかった。てには違のために意味の通じなくなったところを、二三カ所ちょいちょいと取り繕《つくろ》っただけで、彼女は手紙を巻いた。そうして心の中でそれを受取る父母に断った。
「この手紙に書いてある事は、どこからどこまで本当です。嘘《うそ》や、気休《きやすめ》や、誇張は、一字もありません。もしそれを疑う人があるなら、私はその人を憎《にく》みます、軽蔑《けいべつ》します、唾《つばき》を吐きかけます。その人よりも私の方が真相を知っているからです。私は上部《うわかわ》の事実以上の真相をここに書いています。それは今私にだけ解っている真相なのです。しかし未来では誰にでも解らなければならない真相なのです。私はけっしてあなた方を欺《あざ》むいてはおりません。私があなた方を安心させるために、わざと欺騙《あざむき》の手紙を
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