しい。敗《ま》けたものを追窮《ついきゅう》はしないから。――そこへ行くと男にはまた弱いものを憐《あわ》れむという美点があるんだからな、こう見えても」
彼はさも勝利者らしい顔を粧《よそお》って立ち上がった。障子《しょうじ》を開けて室《へや》の外へ出ると、もったいぶった足音が書斎の方に向いてだんだん遠ざかって行った。しばらくして戻って来た時、彼は片手に小型の薄っぺらな書物を四五冊持っていた。
「おいお延好いものを持って来た。お前|明日《あした》にでも病院へ行くなら、これを由雄さんの所へ持ってッておやり」
「何よ」
お延はすぐ書物を受け取って表紙を見た。英語の標題が、外国語に熟しない彼女の眼を少し悩ませた。彼女は拾《ひろ》い読《よみ》にぽつぽつ読み下した。ブック・オフ・ジョークス。イングリッシ・ウィット・エンド・ヒュモア。……
「へええ」
「みんな滑稽《こっけい》なもんだ。洒落《しゃれ》だとか、謎《なぞ》だとかね。寝ていて読むにはちょうど手頃で好いよ、肩が凝《こ》らなくってね」
「なるほど叔父さん向《むき》のものね」
「叔父さん向でもこのくらいな程度なら差支《さしつか》えあるまい。いくら
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