らからと笑った。お延は負けなかった。
「だけどそりゃ理窟《りくつ》よ」
「無論理窟さ。どこへ出ても立派に通る理窟さ」
「駄目よ、そんな理窟は。何だか変ですよ。ちょうど藤井の叔父さんがふり廻しそうな屁理窟《へりくつ》よ」
 お延は叔父をやり込める事ができなかった。けれども叔父のいう通りを信ずる気にはなれなかった。またどうあっても信ずるのは厭《いや》であった。

        七十六

 叔父は面白半分まだいろいろな事を云った。
 男が女を得て成仏《じょうぶつ》する通りに、女も男を得て成仏する。しかしそれは結婚前の善男善女に限られた真理である。一度《ひとたび》夫婦関係が成立するや否や、真理は急に寝返りを打って、今までとは正反対の事実を我々の眼の前に突きつける。すなわち男は女から離れなければ成仏できなくなる。女も男から離れなければ成仏し悪《にく》くなる。今までの牽引力《けんいんりょく》がたちまち反撥性《はんぱつせい》に変化する。そうして、昔から云い習わして来た通り、男はやっぱり男同志、女はどうしても女同志という諺《ことわざ》を永久に認めたくなる。つまり人間が陰陽和合の実を挙《あ》げるのは、
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