ない」
「臆病じゃないのよ、おとなしいのよ」
「どっちにしたって仕方がない、何にも云わないんだから。あるいは何にも云えないのかも知れないね、種がなくって」
 そういう二人が漫然として結びついた時に、夫婦らしい関係が、はたして両者の間に成立し得るものかというのが、お延の胸に横《よこた》わる深い疑問であった。「自分の結婚ですらこうだのに」という論理《ロジック》がすぐ彼女の頭に閃《ひら》めいた。「自分の結婚だって畢竟《ひっきょう》は似たり寄ったりなんだから」という風に、この場合を眺める事のできなかった彼女は、一直線に自分の眼をつけた方ばかり見た。馬鹿らしいよりも恐ろしい気になった。なんという気楽な人だろうとも思った。
「叔父さん」と呼びかけた彼女は、呆《あき》れたように細い眼を強く張って彼を見た。
「駄目だよ。あいつは初めっから何にも云う気がないんだから。元来はそれでお前に立ち合って貰ったような訳なんだ、実を云うとね」
「だってあたしが立ち合えばどうするの」
「とにかく継《つぎ》が是非そうしてくれっておれ達に頼んだんだ。つまりあいつは自分よりお前の方をよっぽど悧巧《りこう》だと思ってるんだ。
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