も「自分の若い時の己惚《おのぼれ》は、もう忘れているんだからね」と云って、彼女に相槌《あいづち》を打ってくれた。……
 叔父の前に坐ったお延は自分の後《うしろ》にあるこんな過去を憶《おも》い出さない訳に行かなかった。すると「厳格」な津田の妻として、自分が向くとか向かないとかいう下らない彼の笑談《じょうだん》のうちに、何か真面目《まじめ》な意味があるのではなかろうかという気さえ起った。
「おれの云った通りじゃないかね。なければ仕合せだ。しかし万一何かあるなら、また今ないにしたところで、これから先ひょっと出て来たなら遠慮なく打ち明けなけりゃいけないよ」
 お延は叔父の眼の中に、こうした慈愛の言葉さえ読んだ。

        六十三

 感傷的の気分を笑に紛《まぎ》らした彼女は、その苦痛から逃《のが》れるために、すぐ自分の持って来た話題を叔父叔母の前に切り出した。
「昨日《きのう》の事は全体どういう意味なの」
 彼女は約束通り叔父に説明を求めなければならなかった。すると返答を与えるはずの叔父がかえって彼女に反問した。
「お前はどう思う」
 特に「お前」という言葉に力を入れた叔父は、お延の腹
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