ら聞いた後で、どのくらい津田が自分を待ち受けているかを知るために、今日は見舞に行かなくってもいいかと尋ねて貰った。すると津田がなぜかと云って看護婦に訊《き》き返させた。夫の声も顔も分らないお延は、判断に苦しんで電話口で首を傾けた。こんな場合に、彼は是非来てくれと頼むような男ではなかった。しかし行かないと、機嫌《きげん》を悪くする男であった。それでは行けば喜こぶかというとそうでもなかった。彼はお延に親切の仕損《しぞん》をさせておいて、それが女の義務じゃないかといった風に、取り澄ました顔をしないとも限らなかった。ふとこんな事を考えた彼女は、昨夕《ゆうべ》吉川夫人から受け取ったらしく自分では思っている、夫に対する一種の感情を、つい電話口で洩《も》らしてしまった。
「今日は岡本へ行かなければならないから、そちらへは参りませんって云って下さい」
それで病院の方を切った彼女は、すぐ岡本へかけ易《か》えて、今に行ってもいいかと聞き合せた。そうして最後に呼び出した津田の妹へは、彼の現状を一口《ひとくち》報告的に通じただけで、また宅《うち》へ帰った。
五十九
お時の御給仕で朝食兼
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