ず》でない、したがって比較的静かなほかの客が、まるで舞台をよそにして、気楽そうな話ばかりしているお延の一群《いちぐん》を折々見た。時間を倹約するため、わざと軽い食事を取ったものたちが、珈琲《コヒー》も飲まずに、そろそろ立ちかける時が来ても、お延の前にはそれからそれへと新らしい皿が運ばれた。彼らは中途で拭布《ナプキン》を放《ほう》り出《だ》す訳に行かなかった。またそんな世話しない真似《まね》をする気もないらしかった。芝居を観《み》に来たというよりも、芝居場へ遊びに来たという態度で、どこまでもゆっくり構えていた。
「もう始まったのかい」
急に静かになった食堂を見廻した叔父は、こう云って白服のボイに訊《き》いた。ボイは彼の前に温かい皿を置きながら、鄭寧《ていねい》に答えた。
「ただ今|開《あ》きました」
「いいや開いたって。この際眼よりも口の方が大事だ」
叔父はすぐ皮付の鶏《とり》の股《もも》を攻撃し始めた。向うにいる吉川も、舞台で何が起っていようとまるで頓着《とんじゃく》しないらしかった。彼はすぐ叔父の後《あと》へついて、劇とは全く無関係な食物《くいもの》の挨拶《あいさつ》をした。
「
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