ってきまりの悪い事なんかなかないの。あんな事云ったって」
「だから話してちょうだいよ」
 年歯《とし》の六つほど下な百合子の小供らしい心理状態を観察したお延は、それを旨《うま》く利用しようと試みた。けれども不意に座を立った姉の挙動が、もうすでにその状態を崩《くず》していたので、お延の慫慂《しょうよう》は何の効目《ききめ》もなかった。母はとうとうすべてに対する責任を一人で背負《しょ》わなければならなかった。
「なに何でもないんだよ。継がね、由雄さんはああいう優しい好い人で、何でも延子さんのいう通りになるんだから、今日はきっと来るに違ないって云っただけなんだよ」
「そう。由雄が継子さんにはそんなに頼母《たのも》しく見えるの。ありがたいわね。お礼を云わなくっちゃならないわ」
「そうしたら百合子が、そんならお姉様も由雄さん見たような人の所へお嫁に行くといいって云ったんでね、それをお前の前で云われるのが恥ずかしいもんだから、ああやって出て行ったんだよ」
「まあ」
 お延は弱い感投詞《かんとうし》をむしろ淋《さみ》しそうに投げた。

        四十七

 手前勝手な男としての津田が不意にお延
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