昼過だろう」
「ええ。十二時二十分よ。あなたの手術はちょうど二十八分かかったのね」
 時計の葢《ふた》を開けたお延は、それを眺めながら精密な時間を云った。津田が手術台の上で俎《まないた》へ乗せられた魚のように、おとなしく我慢している間、お延はまた彼の見つめなければならなかった天井《てんじょう》の上で、時計と睨《にら》めっ競《くら》でもするように、手術の時間を計っていたのである。
 津田は再び訊《き》いた。
「今から宅《うち》へ帰ったって仕方がないだろう」
「ええ」
「じゃここで洋食でも取って貰って食ったらいいじゃないか」
「ええ」
 お延の返事はいつまで経《た》っても捗々《はかばか》しくなかった。看護婦はとうとう下へ降りて行った。津田は疲れた人が光線の刺戟《しげき》を避けるような気分で眼をねむった。するとお延が頭の上で、「あなた、あなた」というので、また眼を開《あ》かなければならなかった。
「心持が悪いの?」
「いいや」
 念を押したお延はすぐ後《あと》を云った。
「岡本でよろしくって。いずれそのうち御見舞に上《あが》りますからって」
「そうか」
 津田は軽い返事をしたなり、また眼をつ
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